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東京地方裁判所 昭和37年(特わ)188号 判決 1964年4月09日

被告人 藤原清 外一六名

主文

被告人鳥飼英穂を懲役六月に、

被告人佐藤隆二を懲役六月に、

被告人早乙女柴三郎を懲役七月に、

被告人森山五郎を懲役五月に、

被告人小野領四郎を懲役七月に、

被告人長田憲麿を懲役八月に、

被告人藤原清を懲役六月に、

被告人榎本信一郎を懲役六月に、

被告人白沢仲吾を懲役五月に、

被告人高橋仙吉を懲役七月に、

被告人勝田善三郎を懲役六月に、

被告人北村茂三郎を懲役五月に、

被告人石田一朗を懲役四月に、

被告人岩崎聡吾を罰金三万五千円に、

被告人国松伊之助を懲役五月に、

被告人志摩満を罰金二万円に、

被告人神谷末夫を罰金四万円に

処する。

但し、この裁判確定の日から、被告人鳥飼英穂、同佐藤隆二、同森山五郎、同白沢仲吾、同北村茂三郎、同石田一朗および同国松伊之助に対し一年間、被告人早乙女柴三郎、同小野領四郎、同長田憲麿、同藤原清、同榎本信一郎、同高橋仙吉および同勝田善三郎に対し二年間、いづれも右刑の執行を猶予する。

被告人岩崎聡吾、同志摩満および同神谷末夫において、右罰金を完納できないときは、金五百円を一日に換算した期間その被告人を労役場に留置する。

被告人鳥飼英穂から金九千円、同佐藤隆二から金一万円、同早乙女柴三郎から金一万五千円、同森山五郎から金一万一千円、同小野領四郎から金一万二千円および同長田憲麿から金一万五千円を各追徴する。

訴訟費用は、別表記載のとおり、関係被告人欄記載の被告人らの負担とするほか、国選弁護人に支給した分は、被告人志摩満の負担とする。

被告人榎本信一郎、同勝田善三郎および同鳥飼英穂に対する昭和三七年四月一三日付起訴状第一の四(贈賄)および第二の一の(四)(収賄)の公訴事実については、被告人らは無罪。

理由

(罪となるべき事実)

第一部序論

第一、執行吏

一、執行吏の職務権限

執行吏は、所属地方裁判所の管轄区域内において、法律の定めるところにより、裁判の執行、裁判所の発する文書の送達その他の事務を行うもので(裁判所法第六二条第四項)、特に民事裁判の執行に関しては、原則的な執行機関として、(1)金銭債権についての有体動産に対する強制執行(民事訴訟法第五六六条以下)、(2)動産引渡の請求権についての執行(同法第七三〇条)、(3)有体動産に対する仮差押(同法第七五〇条)等につき自己の責任と判断において独立してその職務を遂行し、有体動産の任意競売(競売法第三条第一項)についても競売実施機関として国家権力の一端を行使する(有体動産競売における権限の詳細については、後記第三の一参照)。

尤も、執行吏は、国家から俸給を受けず、自己の取扱つた事件の関係者から受ける手数料がその唯一の収入となる(裁判所法第六二条第五項、執達吏規則第一五条第一項)。執行吏の手数料は執達吏手数料規則で定められており、その額を増減することや、手数料および立替金以外の報酬を受けることは許されない(執達吏規則第一五条二項)。但し、一年間の手数料総額が一定額(執行吏国庫補助基準額令参照)に達しないときは、国庫からその不足額が支給される(裁判所法第六二条第五項)。

二、執行吏代理の地位

執行吏は、特別の命令若しくは委任を受けた場合のほか、自己の責任において、(1)執行吏の資格を有する者、(2)三ヵ月以上執行吏の職務を修習した者、(3)裁判所書記官の登用試験に及第した者、(4)地方裁判所において臨時に執行吏の職務を行うのに適当であると認めた者、のいずれかに該当する者に臨時その職務の執行を委任することができる(執達吏規則第一一条、執行吏事務処理規則第一〇条)が、右(1)ないし(3)に該当しない者を執行吏代理に選任するときは、あらかじめその者の履歴書および執行吏代理となる者の要件(同事務処理規則第一〇条)を備えていることを証する書面を添えて所属地方裁判所の認定を受けたうえ(同規則第一二条第一項)、執行吏代理選任の届出(同規則第一一条)をなすことにより地方裁判所から執行吏に執行吏代理の証票(執行吏の証票と同じ形式の身分証明書的なもので、職務の執行の際には携行することが義務づけられている。執達吏規則第一四条。)が交付される。

執行吏代理は、執行吏から臨時且つ個別的に職務の執行を委任される代理人であるけれども、職務の執行に関しては執行吏と同一の権限を有し、特に東京地方裁判所執行吏東京合同役場においては、執行吏代理が執行吏の常設的、一般的な補助機関として、特定の執行吏個人との間における委任関係の稀薄化した状態のもとに、有体動産の差押、換価手続等相当重要な職務が、数多く、執行吏代理によつて遂行されている。

なお、執行吏代理には、裁判所の発する文書の送達のみの職務を代理する執行吏送達代理と、民事裁判の執行、任意競売等執行吏の職務のうち特に重要な事項についても代理できる執行吏執行代理の二種類があつて、前記地方裁判所への執行吏代理適格者認定申請にもこの両者が区別されている。

執行吏代理の報酬は、執行吏がその手数料の中からこれを支給する(執達吏規則第一七条)。

三、東京地方裁判所執行吏東京合同役場

執行吏は、役場を設けることになつており(執達吏規則第五条)、同じ土地に役場を設置する複数の執行吏は当該地方裁判所の認可を受けて合同役場を設置することができるところ(執行吏事務処理規則第三条)、東京地方裁判所執行吏東京合同役場(以下東京合同役場という。)は、これらの規定に従い設置されたもので、同役場規約によれば、東京合同役場は、所在地を東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番地とし、一定数の執行吏をもつて構成され、幹事長その他一定の役員を置き、幹事長が事務の統理、従業員の任免および指揮監督にあたり、重要事項は執行吏全員をもつて構成される総会の決議で決め、役員を除く各構成員の事件担当区域は三ヵ月毎に定められ(実際の運用としては、なるべく担当区域を変えるよう配慮されている。)、各構成員が収受する手数料等の収入はすべて東京合同役場の収入とし、構成員が平等に負担する東京合同役場の人件費(執行吏代理に支払われる給与も含む。)その他諸経費を控除した残額を毎月構成員に均等に分配する(但し、旅費等の実費的なものは、各構成員の実績により各人毎に計算される。)等となつている。

執行吏代理の選任は、総会の決議により幹事長名で行われるが、各執行吏代理は執行吏全員の執行吏代理という扱いになつており、執行の委任は、前記のとおり、理論的には臨時的、個別的でありながら、実際的には一般執行事件の外務についても、役員である執行部長の配分により、毎日のように仕事が与えられ、実質的には執行吏と同等の事件処理をしている。また、執行吏代理の給与は、固定給の本給と、実績により定まる外勤手当その他諸手当が支給されることになつているところ、例えば昭和三六年度中における執行吏代理被告人早乙女柴三郎の外勤手当は金三二一、八一二円(旅費を含む。)、同森山五郎の外勤手当は金三六、六三四円(旅費を含む。)となつている。

東京合同役場における事件の受理から執行までの手続関係は、新件受理の際、当番制により一人の執行吏が、担当区域にかかわらずその日の全事件を申立人から予め復代理人選任の許諾を得たうえで受任し、執行部において事件を担当地域別に区分配付し、事件記録には現実に執行を担当する執行吏名が記載される扱いで、実質的には東京合同役場の全構成員に事件が委任される形となつており、執行吏代理には、担当区域の執行吏の名において、執行部長が記録を交付することにより、委任がなされ、その形態は、当該手続毎に個別的にその日の仕事のみが委任されるもので、包括的、終局的な授権はできないことになつている。

第二、動産競売業者

一、動産競売業者の意義および沿革

動産競売業者は、東京地方裁判所執行吏の行う有体動産の競売に参集し、競売物件の競落および転売を専業とするもので、俗に道具屋といわれているが、昭和二〇年の終戦前から東京区裁判所執達吏が行う有体動産の競売には、特定の専門業者のみが集り、殆ど「せり」をすることなく、特定人が競落し、競落物件を債務者に買戻させ又は古物市場に処分し、その利益を参集した業者の間で分配することが行われていた。動産競売業者に対しては、昭和一二、三年頃暴利の取締と物価の統制という観点から、東京警視庁安寧係の指導で、東京動産売買組合なる統制組合が結成され、各業者が出資して組合組織のもとに買戻率の制限(少額の競売物件でも競落価格の五割増以下)、取引状況の監査および警視庁への報告など種種の制約が加えられ、すべてを組合の仕事とし、各人が組合から一定の給与を受けるという時期もあつたが、右組合も戦争の激化により自然消滅し、終戦後は、各自が独立して動産競売業をはじめ、組織的な動きとしては、昭和三三年頃被告人藤原清、同榎本信一郎、同白沢仲吾、同勝田善三郎および同石田一朗並びに荒牧正則および梶田重雄らが東京都台東区北大門町一四番地に大平連絡所なる事務所を設けたが、それが更にいくつかの組に分れて仕事をするようになつていた。

二、霞ヶ関交友会

終戦後しばらくして、動産競売業者(以下「道具屋」という。)の数が増えるのに比し、競売事件の件数の割合が低下する傾向を示し、他方競落物をめぐる当事者と道具屋間の紛糾につき執行吏役場から自粛を要望する申入れがあつたりして、道具屋全体の結束を強化するため、昭和三五年一月頃東京地方裁判所の有体動産競売事件に出入りする道具屋二〇余名の全員で霞ヶ関交友会(以下「交友会」という。)なる団体を結成し、規約の制定、バツチの交付などある程度の組織化が図られ、会長には閲歴、力量および資力などから被告人高橋仙吉が選ばれ、松葉会東京都東支部長の小川猪三郎が副会長になつている。古くから道具屋のなかでは、幹部級の者とそれ以外の者との階級があつて、分配金の率にも大きな格差がつけられていたが、交友会の結成を機会に、被告人高橋仙吉の発案で、経歴、資力および能力などの諸点から幹部、中幹部、平の三階級の格付がなされ、幹部には、被告人高橋仙吉、同藤原清、同勝田善三郎、同石田一朗、同国松伊之助および同神谷末夫並びに小川猪三郎、中幹部には、被告人榎本信一郎、同白沢仲吾および同北村茂三郎並びに梶田重雄および中村忠治、平には、相被告人勝田幸男および被告人岩崎聡吾並びに小森薫也、杉江養長、伊藤豊吉、松原義三郎、荒牧正則および鈴木重成ら、が格付されている。しかし、右交友会は前記東京動産売買組合とは全く性格を異にし、会員は各自が独立して動産競売に参集し、むしろ特定の少人数で仕事を獲得しようとする動きが強く、事実上数派に分れており、昭和三六年一一月頃被告人藤原清、同榎本信一郎、同白沢仲吾、同勝田善三郎、同北村茂三郎、同岩崎聡吾および相被告人勝田幸男並びに小森薫也および杉江養長らが東京都台東区東黒門町一番地小西無線ビルの一室を借り受けて霞商会なる連絡場所を設けたが、必要経費は各自が均等に負担する仕組みになつており、右グループ内でも更に幾組かの集りがあるし、その他、霞商会以外にも、(1)被告人石田一朗および同神谷末夫の組に属する小川猪三郎、中村忠治および鈴木重成、(2)伊藤豊吉および松原義三郎の組、(3)被告人国松伊之助その他特にグループに属していない者、など二〇余名の道具屋相互間には、仕事を獲得する面において、かなり複雑な競争関係を生じているが、一旦同一競売現場に参集した以上は、たとえ組が異なつても一人だけが競買申出人となり、他の者は付値をせず、その物件を処分した利益を現場に参集した全員で分配する点は常に厳守されて今日に至つている。

第三、有体動産競売の実際

一、有体動産に対する強制執行手続の概要

債権者から有体動産強制執行の委任を受けた執行吏は、債務者宅に出向いて一定の有体動産を差押え、競売期日を指定(原則として七日以上の間隔を置く、民事訴訟法第五七五条。)し、その旨執行吏役場内に公告した後、競売期日に債務者宅において競売を実施し、売得金を領収すると共に競落物件を引渡し、必要書類を作成して、翌日執行吏役場の会計に売得金が納付され、債権者への配当がなされる。

(一) 有体動産の差押見積価額と競落価格

執行吏は、超過差押禁止(民事訴訟法第五六四条第二項)という観点から差押物件の価額を有体動産差押調書に記載し、機械類等特殊物件については価額の適正を期する意味で鑑定に付しているが、執行時間の制約と物件評価能力の個人差に加え、債権者が、競売という換価手続により債権の部分的満足を受けるよりも、競売を実施する旨の圧力のもとに債務者から分割弁済を受ける方が有利なため、差押後現場に競売の段階にまで至るものはその一割にも満たず、差押時と競売時との間に相当の日数が経過している事件もかなりあつて、道具屋からは差押見積価額を無視され、法律的にも、不動産競売(民事訴訟法第六五五条)と異なり、最低競売価額の定めがないため、有体動産競売事件の九割以上が見積価額を下回る競落価格で競売処理されているものとみられている。

しかしながら、後記のとおり、道具屋が競売物件に付値する基準は、当該物件の客観的な取引価格に置かれるのでなく、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、極端に低い価格で決めるのが常であり、たまに道具屋以外の者が競売に参加したような場合には、採算を度外視した「せり上げ」を行つて、その損失を参集した道具屋全員で分担するという方法までとり、競売価格の決定権を完全に道具屋の掌中に確保し、公の競売制度を自己の薬籠中のものにしている。

また、後記各論に現われた範囲においては、店舗を構え古物市場にも出入りしているいわゆる街の古物商が、競売物件を債務者から買取ると仮定して算出した鑑定価格と対比してみれば、逆に執行吏の差押見積価額の方が低くなつている事例が多く、一般的に、執行吏の差押見積価額が取引の実情から遊離し、不当に高くなつているわけではない。

(二) 公告について

法は、競売に多くの買受希望者が参集し、最高価格で競買する者が出ることを期待して公告という制度を採つているのであるが、現実的には、競売期日の延期(以下単に「競売延期」という。)があつたり執行時間が不明確であつたりするため、公告をみただけでは、競売参加の機会を得ることが殆ど不可能に近い状態であり、この道の玄人である道具屋でさえ、公告を定期的に印刷し、仲間内で刊行している「内報」は一応の手掛りとする程度で、実際にその仕事を得るためには、毎朝執行吏役場に集り、債権者、債権者代理人又は親しい仲間から具体的な情報を聞き出し、あるいは執行吏が当日の行動予定を書きこんだいわゆる「持出票」の控えを「のぞき見」するなどして、秘かにそれぞれの競売現場に出かけ、執行吏の到着を待つのが例となつている。

(三) 債権者代理人

債権者は、強制執行等に立ち会うことを業とするいわゆる債権代理人に一定の日当又は手数料を支払つて執行関係の仕事を委任するのが通例であるが、有体動産競売事件については右の日当等を支給しないのが常で、債権者代理人も、債権者のために差押物件をできる限り高く競落するよう道具屋に働きかけることをしないばかりか、道具屋が競落物件の処分により取得する利益の二分の一をいわゆる「権分」として道具屋から受け取る慣例となつているため、道具屋と利害関係を共通にし、競落価格について異議を申立てることもなく、競売事件の情報を特定の道具屋に流し、競売を延期せずに実施して道具屋に仕事を与える実権を握つている。この「権分」も、当初は立会日当が少額であつたため、道具屋から適宜利益の一割位が提供されていたが、道具屋間の仕事の獲得競争が激しくなり、かつ競売延期の権限を債権者代理人が有しているところから、利益の二分の一という高い率にまで漸次上昇してきたもので、その他、債務者側の代理人として道具屋の売戻交渉その他を援助するいわゆる債務者代理人がある場合には、右「権分」のうちからその四割が「務者分」として分配される仕組みになつており、道具屋自身が、この債権者代理人又は債務者代理人の地位に立つことをみかける事例もある。

二、競売当日における執行吏および動産競売業者の活動

(一) 競売現場に到る方法

執行吏は、競売事件に限らず、その日の執行事件を、朝方、執行吏役場において、関係者と面接のうえ、地理的条件等を考慮し、待合せ場所、執行時間等を順序立てて予定し、最初の事件は「直行」と称し、債権者側の用意した自動車に同乗して現場に赴くことが多く、他の債権者も予定どおり執行を了終することを欲するため、待合せ場所からタクシーを拾うなどして執行吏に自動車の便を与え、道具屋もこれに追従している。なお、道具屋は、競売に多数の者が参集すると配当金の額が少くなるところから、他の者には知らせずに気の合つた二、三の者だけで現場に赴くのであるが、実際には、他の道具屋もそれぞれの筋から情報を得て別個に現場に集つてくるのが通例である。

(二) 競売現場における折衝

執行吏は、債務者に任意弁済を促し、応じないときは、予定どおり、差押物件を点検のうえ競売を開始するのであるが、競買人として集まる者は、殆どの事件が道具屋のみである。道具屋は、仲間同士で「せり合い」をすることが結果的に利得を少くすることになるのをおそれ、債権者又はその代理人から事件を頼まれた者、債務者から競売物件の買戻を頼まれた者、あるいは大きな競売事件では幹部級の者、などのうち誰か一名が競買を申し出て付値をはじめると、他の者は、皆、物件の価格につき付値を引き下げるよう働きかけるか付値の助言をする程度で傍観しており、時には手分けして付値をし、その一人が競買人として署名し、売得金は他の者が提供するなど、暗黙のうちに競売物件をできるだけ安く競落しようとする態度を採つている。競売事件によつては、物件に瑕疵があつたり差押時から相当の日数が経過していたりして、自然競落価格が安くなる理由のある事例も少くはないが、執行吏は、競落価格の決る過程において、付値を高くするよう要求することがしばしばあつて、執行吏のなかには差押見積価額と付値との間にあまり差のあるときは、競買人なしとして職権で競売を延期する扱いをとる者もいる。

(三) 競売終了後の行動

執行吏は、競売終了後売得金を受領し、競売調書に執行関係者の署名を求め、次の執行現場に回ることになるが、この過程においてある範囲の執行吏達に対し、道具屋から一定の金員がいわゆる「メリ」として供与されることがあり、その金額が、道具屋の競売物件の処分による推定利益とある程度の相関関係に立つていることは見逃すことのできないところである(競売が延期されたような場合には「メリ」は存しない。)。道具屋は、競売物件を取得しても古物市場に出すことを目的とせず、殆ど全部といつてもよい程債務者側に買戻させる交渉をするもので、時折債権者側に競売物件を売り渡すこともあるが、その転売価格はいづれも競落価格の二倍位になつており、債務者側が即金で全額支払えぬ場合には更にその価格が引きあげられるなどして、これが債務者らに割り切れない感情を抱かせる原因となつている。しかしながら、道具屋としての立場からは、いわゆる「権分」に利益の二分の一をとられ、参集した道具屋全員で残りの利益を分配し、競売延期などでその日の仕事を失う損失を補う等の観点から、自らは敢えて多額の利益を得ているものとは意識していないものの如くである。利益の分配関係については、競売物件が即金で処分できなくても、同じグループの仲間だけのときは、話し合いで一定の利益を算出したうえ、仲間の一人が待ち賃をみて競売物件を引き受け、異つたグループの道具屋相互間では、当該競売による利益を当日分配するため、いわゆる「二番ぜり」と称する「せり」が競売現場付近で行われ、最高の価格をつけた者が競売物件に対する権利を取得し、現実に資金を提供して現場付近の路上又は喫茶店(霞商会グループのみのときは、連絡事務所)等で、集つた道具屋に配当金として一定金員が分配される。分配の対象となる利益は、転売価格(道具屋が引受け又は「二番ぜり」した場合はその価格)と競落価格の差額から、(1)競落名義人に支払われる署名料(競売価格一万円につき二〇〇円の割合)、(2)執行吏に対する賄賂金(いわゆる「メリ」のこと。)、(3)その他道具屋共通の経費、(4)債権者代理人に対する謝礼金(いわゆる「権分」で、右(1)ないし(3)を控除した残額の二分の一)を差引いたもので、幹部三、中幹部二、平一の割合で格付に従つて配分されるが、その率は必ずしも確定的なものではなく、同じグループ内だけのとき又は利益が少なかつたり、中幹部、平だけのときは均等に配分される例もある。

(四) 動産競売業者以外の者が競売に参加しない理由

競売物件は、現に債務者の手許にあり、しかも処分する気のない者から強制的に売り渡させるもので、一般の古物の売買と異り感情問題がからみ、また前記のように競売が何時実施されるか不明確で、債権整理の観点から差押物件全部を買い取らされるような雰囲気があるため、街の古物商には以前から裁判所の競売事件を敬遠する傾向がみられ、たまに当事者に頼まれて競売に参加しても、集つた道具屋全員が結束して対抗するため、「せり合い」に勝つことができず、おのずと、裁判所の競売はすべて道具屋がこれを独占するような状態が形成され、前記のように競落価格の点などに弊害を生じているが、執行吏の立場からすると、事件処理のため、道具屋を不可欠の存在としてその意義を認めている面もある。

第四、被告人らの経歴

一、執行吏および執行吏代理

(一) 被告人鳥飼英穂は、日本大学法学部を三年で中途退学後、昭和二年一月頃東京地方裁判所の雇となり、二年位して書記に昇進し、昭和二三年一一月頃には東京第二検察審査会事務局長になつたが、昭和二七年三月頃退職して翌四月一日付で東京地方裁判所執行吏に任命され、内勤事務に通算九ヵ月位従事したほかは一般執行事件の外務を担当していたもの、

(二) 被告人佐藤隆二は、高等小学校を卒業後、大正九年二月頃大審院の雇となり、四年位して書記に昇進し、昭和二三年一二月頃には最高裁判所第一小法廷民事部主任書記官になつたが、昭和三六年一月三一日付で退職し、翌二月六日東京地方裁判所執行吏に任命され、一年間の外務見習期間を経て昭和三七年二月頃からは一般執行事件の外務を担当していたもの、

(三) 被告人早乙女柴三郎は、昭和二年六月頃東京区裁判所執達吏役場の事務員となり、仕事のかたわら日本大学法学部を卒業し、一時軍需工場に勤めたこともあつたが、昭和二五年六月頃東京地方裁判所執行吏東京合同役場の事務員に採用され、昭和二九年五月頃東京地方裁判所執行吏代理(執行代理)の選任を受け、六年余り主として内勤事務に従事し、昭和三六年一月頃からは一般執行事件の外務を担当していたもの、

(四) 被告人森山五郎は、高等小学校を卒業後、昭和七年頃東京区裁判所執達吏役場の給仕となり、仕事のかたわら法政大学第二専門部法科を卒業し、昭和二二年一二月頃前記東京合同役場の事務員に採用され、翌二三年八月頃東京地方裁判所執行吏代理(送達代理)の選任を受け、昭和三〇年八月頃からは執行部次長として内勤事務に従事していたが、昭和三六年五月頃執行吏代理の認定を得て内勤事務のほか要急事件等一般執行事件の外務も随時分担してきたもの、

(五) 被告人小野領四郎は、佐賀商船学校に一年位通学したのち、大正九年一二月頃佐賀区裁判所執達吏役場の事務員となり、二年位して同裁判所執達吏代理に選任されたが、昭和二年頃上京して日本大学専門部法科に入り、同科を卒業して間もない昭和五年八月頃東京区裁判所執達吏役場送達代理に任命され、一時東京区裁判所書記の辞令を受けてのち、昭和九年七月頃同裁判所の執達吏となり、以後通算二年間内勤事務に従事したほかは二五年有余一般執行事件の外務を担当してきたもの、

(六) 被告人長田憲麿は、高等小学校を卒業後、山梨県吉田登記所の雇となり、東京地方裁判所民事部雇を経て、大正一〇年一二月頃裁判所書記に任命され、昭和六年五月頃には大審院第三刑事部の主任書記に昇進したが、昭和一一年四月頃退職して東京区裁判所の執達吏となり、以後通算一年六月位内勤事務を扱つた以外は、二四年有余一般執行事件の外務を担当してきたもの

であり、

二、道具屋

(一) 被告人藤原清は、尋常小学校高等科を卒業後、郵便局の事務員、駐留軍関係の人夫等その職を転転としていたが、昭和二三年頃義兄(実姉の夫)にあたる被告人高橋仙吉の世話で裁判所の動産競売物件の売買等を業とするいわゆる道具屋の手伝いをするようになり、昭和三四、五年頃からは独立して道具屋の仕事を続けていたもの、

(二) 被告人榎本信一郎は、一六才の頃履物商の見習となり、その後自ら履物商を営むようになつたが、昭和一五年頃強制執行に立会ういわゆる執行立会人の仕事をはじめ、昭和一七年頃から道具屋となつたもの、

(三) 被告人白沢仲吾は、尋常小学校を六年で中途退校し、株式会社吉岡電機製作所工作部の係長にまでなつたが、同会社が倒産したため昭和二三年頃から妻の実兄にあたる被告人高橋仙吉の紹介で道具屋の仲間に入り、昭和二九年頃には古物商の免許を受け、独立して道具屋の仕事をするようになつたもの、

(四) 被告人高橋仙吉は、関根組の輩下に属していた西田伊之助の世話で昭和七、八年頃道具屋となり、一時兵役に服したこともあつたが、終戦後も、松葉会本部の情報部長の肩書をもつ一方、道具屋仲間の有力者として大きな競売事件に関与していたもの、

(五) 被告人勝田善三郎は、小学校を卒業後、大正五年頃弁護士の下働きをするようになり、昭和一〇年頃道具屋の仲間に入つたが、戦時中しばらくその職を離れ、昭和二三年頃から再び道具屋の仕事を続けるようになつたもの、

(六) 被告人北村茂三郎は、武蔵ヶ丘高等学校を卒業後、二年位経つた昭和二八年頃実父の知人にあたる被告人国松伊之助のすすめにより道具屋となつたもの、

(七) 被告人石田一朗は、早稲田中学校を三年で中途退学し銅鉄商を営む叔父の手伝いをしていたが、昭和一〇年頃実父が道具屋をしていたことから古物商の免許を受けて道具屋となつたもの、

(八) 被告人岩崎聡吾は、大阪府の報徳工業学校を卒業後、日立造船株式会社の工員となり、終戦後家業の料理店の手伝い、自動車運転手などをし、昭和三四年二月頃から義兄(妻の姉の夫)にあたる被告人高橋仙吉の世話により道具屋となつたもの、

(九) 被告人国松伊之助は、尋常小学校を卒業後、大工の見習、工員などその職を転転とした後、昭和一〇年道具屋となつたが、五、六年でやめ、昭和二五年頃から再び道具屋となつたもの、

(一〇) 被告人志摩満は、法政短期大学工学部を一年で中途退学後、古物商をしている叔父鈴木子之蔵のもとで見習として働くうち古物商の免許をとり、昭和三一年頃道具屋となつたが、二年足らずでやめ、昭和三六年一月頃友人と共に建築材料の販売を目的とする日本通商株式会社を設立して、その取締役総務部長となつていたもの、

(十一) 被告人神谷末夫は、東洋商業学校を中途退学後、職業安定所の日雇人夫として裁判所の執行関係の仕事に出向いたことから道具屋と知り合いになり、昭和二七年頃から道具屋の仕事をするようになつたもの

である。

第二部本論

第一、伊東五郎ほか一名競売関係

(一) 被告人榎本信一郎、同白沢仲吾および同北村茂三郎は、相被告人道具屋勝田幸男と共に、被告人鳥飼英穂が昭和三六年五月二〇日午後三時三〇分頃東京都江東区深川木場一丁目五番地伊東五郎方で行つた債務者右伊東五郎および伊東林産工業株式会社(代表取締役伊東五郎)所有のテレビ一台ほか二六点(差押見積価額合計金五二、七〇〇円、競落価格合計金四〇、四〇〇円)の有体動産競売(以下「競売」と略称する。)に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人榎本信一郎のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎は、同日右競売終了後前記伊東五郎方付近の路上において、被告人鳥飼英穂に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、執行時間などにつき便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人鳥飼英穂の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ。)に関し供与し、

(三) 被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記伊東五郎方において、同人よりテレビ一台ほか一二点を金二九、九〇〇円で買受け、もつて古物商の営業をなし、

第二、株式会社八千代競売関係

(一) 被告人勝田善三郎、同石田一朗、同国松伊之助および同神谷末夫は、被告人鳥飼英穂が昭和三六年七月三一日午前一一時四〇分頃東京都足立区千住八千代町七二番地株式会社八千代(代表取締役浅井誠一)方で行つた債務者右株式会社八千代所有の陳列ケース五個ほか一五七点(差押見積価額合計金三五一、〇〇〇円、競落価格合計金一七五、五〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人神谷末夫のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人白沢仲吾は、同日右競売終了後被告人鳥飼英穂を次の競売現場の同区千住旭町二六番地小島悟方まで自動車で送る途中の車内(千住新橋付近)において、被告人鳥飼英穂に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人鳥飼英穂の前記職務に関し供与し、

第三、木村要三郎競売関係

(一) 被告人白沢仲吾および同高橋仙吉は、被告人鳥飼英穂が昭和三六年八月一九日午前一一時四〇分頃東京都葛飾区本田川端町七〇三番地木村要三郎方で行つた債務者右木村要三郎所有の菊全判オフセツト印刷機一台(差押見積価額金二〇〇、〇〇〇円、競落価格金三〇〇、〇〇〇円)の競売終了後、右同所において、被告人高橋仙吉の指示により担当執行吏に金員を供与する旨打ち合せ、共謀のうえ、被告人白沢仲吾が、同日被告人鳥飼英穂を京成電鉄お花茶屋駅まで自動車で送る途中の車内において、右同人に対し、前記競売物件の競落に関し、執行時間などにつき便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人鳥飼英穂の前記職務に関し供与し、

(二) 被告人高橋仙吉は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記木村要三郎方において、同人より前記印刷機一台を金三〇〇、〇〇〇円で買受け、右同日右同所において、工作機械売買業米山猪三郎に対し右物件を金三五〇、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第四、川村慎三競売関係

(一) 被告人藤原清および同勝田善三郎は、被告人鳥飼英穂が昭和三六年九月七日午後四時三〇分頃東京都葛飾区下小松町五〇一番地川村慎三方で行つた債務者右川村慎三所有のテレビ一台ほか一一点(差押見積価額合計金一九、六〇〇円、競落価格合計金一三、三〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人藤原清のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者数名で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人藤原清および同勝田善三郎は、同日右競売終了後前記川村慎三方において、担当執行吏に金員を供与する旨打ち合せ、更に被告人藤原清が自動車を運転して現場付近にきていた小森薫也にもその意を伝え、順次共謀のうえ、程なく、小森薫也が、右自動車に乗車した被告人鳥飼英穂に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人鳥飼英穂の前記職務に関し供与し、

(三) 被告人藤原清は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記川村慎三方において、同人より前記の競売物件を金一三、三〇〇円で買受け、同年同月九日右同所において、右同人に対し右物件を金三〇、〇〇〇円で競り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第五、逆井衛競売関係

(一) 被告人榎本信一郎および同勝田善三郎は、被告人鳥飼英穂が昭和三六年九月二六日午前一一時四〇分頃東京都葛飾区本田渋江町四七〇番地逆井衛方で行つた債務者右逆井衛所有の整理ダンス一棹ほか五点(差押見積価額合計金八一、〇〇〇円、競落価格合計金三一、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人榎本信一郎のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者数名で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記逆井衛方において、同人より前記(一)の競売物件を金三一、〇〇〇円で買受け、同年一〇月二七日右同所において、右同人に対し右物件を金六〇、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第六、関根和子競売関係

(一) 被告人白沢仲吾は、前示相被告人勝田幸男と共に、被告人鳥飼英穂が昭和三六年一二月一六日午前一一時三〇分頃東京都葛飾区本田町二六番地関根和子方で行つた債務者右関根和子所有の冷蔵庫一台ほか二七点(差押見積価額合計金二一、〇〇〇円、競落価格合計金一六、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、相被告人勝田幸男のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら両名で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人白沢仲吾は、同日右競売終了後引き続き被告人鳥飼英穂が同区亀有町二丁目九六六番地有限会社カエデヤ(代表者森本善一)方で行つた競売にも相被告人勝田幸男と共に参加したが、右競売には債務者側より競買申出があつて「せり」が行われたため、競落価格も高くなり、転売利益の見込みも難しくなつたことから、右競売終了後右有限会社カエデヤ付近において、相被告人勝田幸男と担当執行吏に前記(一)の関根和子の競売に関して金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、相被告人勝田幸男が同所付近の路上において、被告人鳥飼英穂に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人鳥飼英穂の前記職務に関し供与し、

右第一ないし第四および第六の競売関係

被告人鳥飼英穂は、右第一の(二)、第二の(二)、第三の(一)、第四の(二)および第六の(二)記載のように、五回に亘り、右記載の日時、場所において、被告人榎本信一郎ほか四名から、いずれもその都度、前記趣旨(但し、第六の(二)については、有限会社カエデヤの競売を担当した意味をも含む。)のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計九、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第七、近藤長春競売関係

(一) 被告人藤原清および同白沢仲吾は、被告人佐藤隆二が昭和三六年一一月二七日午後零時五分頃東京都足立区五反野南町一、三〇三番地近藤長春方で行つた債務者右近藤長春所有のテレビ一台ほか一一点(差押見積価額合計金二六、八〇〇円、競落価格合計金一三、六〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人白沢仲吾のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら関係者で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人藤原清および同白沢仲吾は、同日右競売終了後前記近藤長春方より五〇メートル位離れた路上において、執行立会人日達好人を介し担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく同所付近のバス通りにおいて、右日達好人を通じ被告人佐藤隆二に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人佐藤隆二の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ。)に関し供与し、

第八、高田正作ほか一名競売関係

(一) 被告人藤原清、同榎本信一郎、同勝田善三郎、同北村茂三郎および同岩崎聡吾は、被告人佐藤隆二が昭和三六年一二月一二日午前一一時二五分頃東京都足立区下沼田町三二四番地高田正作方で行つた債務者右高田正作および高田建設株式会社(代表取締役高田正作)所有の文化タンス一棹ほか五二点(差押見積価額合計金一三一、二〇〇円、競落価格合計金五五、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人藤原清のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎および同勝田善三郎は、同日右競売終了後前記高田正作方事務所内において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人榎本信一郎が同所付近の路上において、被告人佐藤隆二に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人佐藤隆二の前記職務に関し供与し、

(三) 被告人藤原清は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記高田正作方において、同人および高田建設株式会社より前記(一)の競売物件を金五五、〇〇〇円で買受け、同日右高田正作に対し右物件を金一五〇、〇〇〇円で売り渡す取極めをし、もつて古物商の営業をなし、

第九、三森銀次郎競売関係

(一) 被告人白沢仲吾は、相被告人勝田幸男と共に、被告人佐藤隆二が昭和三六年一二月一六日午後四時二〇分頃東京都荒川区南千住町三丁目一二八番地三森銀次郎方で行つた債務者右三森銀次郎所有の洋服タンス一棹ほか七点(差押見積価額合計金一八、五〇〇円、競落価格合計金一一、六〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人白沢仲吾のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら両名で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人白沢仲吾は、同日右競売終了後前記三森銀次郎方付近から被告人佐藤隆二および相被告人勝田幸男ともどもタクシーに乗車したが、東京都台東区内を走行中の車内において、相被告人勝田幸男に千円札一枚を示して担当執行吏に金員を供与する合図をし、同被告人もこれを了承し、共謀のうえ、程なく、被告人白沢仲吾が同区国鉄上野駅付近の車中において、被告人佐藤隆二に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、執行時間などにつき便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人佐藤隆二の前記職務に関し供与し、

第一〇、東亜マイクロ写真株式会社競売関係

(一) 被告人藤原清、同高橋仙吉および同石田一朗は、被告人佐藤隆二が昭和三七年二月一六日午前一一時一〇分頃東京都豊島区高田南町三丁目七三六番地桜光業株式会社内で行つた債務者東亜マイクロ写真株式会社(代表取締役梅村中)所有の三五ミリ撮影機一台ほか四〇点(差押見積価額合計金七二五、〇〇〇円、競落価格合計金三五四、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人高橋仙吉のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人高橋仙吉は、同日右競売終了後前記桜光業株式会社事務所入口付近で被告人藤原清に対し担当執行吏に金員を供与するよう指示し、同所付近にいた被告人勝田善三郎も、被告人藤原清から求められるままその使途を察知しながら同人に金員を貸与し、順次共謀のうえ、程なく、被告人藤原清が、同所に駐車中の自動車に乗車した被告人佐藤隆二に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金五、〇〇〇円を被告人佐藤隆二の前記職務に関し供与し、

(三) 被告人高橋仙吉は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記桜光業株式会社内において、東亜マイクロ写真株式会社より前記の(一)競売物件を金三五四、〇〇〇円で買受け、同日右同所において、六桜商事株式会社経理課長前田隆太良に対し右物件を金七二五、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

右第七ないし第一〇の競売関係

被告人佐藤隆二は、右第七ないし第一〇の各(二)記載のように、四回に亘り、右記載の日時、場所において、被告人藤原清ほか三名から、いずれもその都度、前記趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計一〇、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第一一、井上昌久競売関係

(一) 被告人榎本信一郎は、相被告人勝田幸男と共に、被告人早乙女柴三郎が昭和三六年八月二九日午後二時五分頃東京都大田区東蒲田三丁目三九番地井上昌久方で行つた債務者右井上昌久所有のデコラ張り長方型座卓一個ほか一九点(差押見積価額合計金三六、〇〇〇円、競落価格合計金二五、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、相被告人勝田幸男のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎は、同日右競売終了後前記井上昌久方屋内廊下付近において、相被告人勝田幸男と担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、相被告人勝田幸男が右同所土間付近において、被告人早乙女柴三郎に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人早乙女柴三郎の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ)に関し供与し、

第一二、井上昌子競売関係

(一) 被告人藤原清、同勝田善三郎および同国松伊之助は、被告人早乙女柴三郎が昭和三六年八月二九日午後三時頃東京都港区芝田村町三丁目九番地井上昌子方で行つた債務者右井上昌子所有のテレビ一台ほか四〇点(差押見積価額合計金四七、九〇〇円、競落価格合計金二二、七〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人藤原清のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人藤原清および同勝田善三郎は、同日右競売終了後前記井上昌子方食堂において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、被告人藤原清が同所付近の路上にいた小森薫也にもその意を伝え、同人もこれを了承し、順次共謀のうえ、程なく、小森薫也が同所付近において、被告人早乙女柴三郎に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を前記早乙女柴三郎の職務に関し供与し、

(三) 被告人藤原清は、東京都公委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記井上昌子方において、同人より前記(一)の競売物件を金二二、七〇〇円で買受け、同日同所において、同人に対し右物件を金五〇、〇〇〇円で売り渡す取極めをし、もつて古物商の営業をなし、

第一三、東京パイプ工業株式会社競売関係

被告人白沢仲吾および同北村茂三郎は、被告人早乙女柴三郎が昭和三六年九月一六日午後零時五分頃東京都大田区北糀谷二、四八七番地東京パイプ工業株式会社工場内で行つた債務者東京パイプ工業株式会社(代表取締役岡野正一郎)所有の六抽斗片袖高机一個ほか三八点(差押見積価額合計金一六四、五〇〇円、競落価格合計金九八、五〇〇円)の競売終了後、右工場内競売現場において、相被告人勝田幸男を交え担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人北村茂三郎が右同所において競落代金を支払う際に、被告人早乙女柴三郎に対し、前記競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金五、〇〇〇円を被告人早乙女柴三郎の前記職務に関し供与し、

第一四、近藤績競売関係

(一) 被告人榎本信一郎および同北村茂三郎は、被告人早乙女柴三郎が昭和三六年一〇月一〇日午後四時四五分頃東京都墨田区東駒形町二丁目一八番地近藤績方で行つたテレビ一台ほか一一点(差押見積価額合計金四九、五〇〇円、競落価格合計金三四、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人榎本信一郎のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎および同北村茂三郎は、同日右競売終了後前記近藤績方競売現場において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、被告人榎本信一郎が右近藤績方戸外で被告人藤原清にその意を伝え、同人もこれを了承し、更に被告人藤原清は右の意を体し、同所付近で小森薫也に金員の立替供与方を依頼してその承諾を受け、ここに右被告人三名は右小森薫也とも順次共謀のうえ、程なく、小森薫也が同所に駐車中の自動車内において、被告人早乙女柴三郎に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、執行時間などにつき便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人早乙女柴三郎の前記職務に関し供与し、

(三) 被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記近藤績方において、同人より前記(一)の競売物件を金三四、〇〇〇円で買受け、同年一一月三日右同所において、同人に対し右物件を金七〇、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第一五、今井欽吾ほか一名競売関係

(一) 被告人榎本信一郎、同勝田善三郎、同北村茂三郎および同国松伊之助は、相被告人勝田幸男と共に、被告人早乙女柴三郎が昭和三七年二月七日午後二時四五分頃東京都中野区千代田町七〇番地今井欽吾方で行つた債務者右今井欽吾および今井松代所有の九抽斗高机一個ほか六〇点(差押見積価額合計金一八七、八〇〇円、競落価格合計金八〇、〇〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人榎本信一郎のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人勝田善三郎は、同日右競売終了後前記今井欽吾方において相被告人勝田幸男と担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、相被告人勝田幸男が右今井欽吾方から地下鉄中野新橋駅に至る間の路上において、被告人早乙女柴三郎に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人早乙女柴三郎の前記職務に関し供与し、

(三) 被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記今井欽吾方において、同人および今井松代より前記(一)の競売物件を金八〇、〇〇〇円で買受け、同日同所において、右今井欽吾に対し右物件を「同年二月一五日までに支払う場合は金一七〇、〇〇〇円、同月二五日までに支払う場合は金二〇〇、〇〇〇円」で売り渡す旨の取極めをし、もつて古物商の営業をなし、

右第一一ないし第一五の競売関係

被告人早乙女柴三郎は、右第一一の(二)、第一二の(二)、第一三、第一四の(二)および第一五の(二)記載のように、五回に亘り、右記載の日時、場所において、相被告人勝田幸男ほか二名からいずれもその都度、前記趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計一五、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第一六、株式会社糟屋製作所競売関係

(一) 被告人藤原清および同高橋仙吉は、被告人森山五郎が昭和三六年一〇月一六日午後二時二〇分頃東京都葛飾区本田川端町一七七番地株式会社糟屋製作所内で行つた債務者右株式会社槽屋製作所(代表取締役吉川国一郎)所有の英式六尺旋盤一台ほか八七点(差押見積価額合計金五一〇、〇〇〇円、競落価格合計金二二五、〇〇〇円)の競売終了後、同会社事務所外において、被告人高橋仙吉の発意により、担当執行吏に金員を供与する旨を打ち合せ、共謀のうえ、程なく、被告人藤原清が、同所付近路上に駐車中の自動車に乗車した被告人森山五郎に対し、前記競売物件の競落に関し便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金五、〇〇〇円を被告人森山五郎の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ。)に関し供与し、

(二) 被告人高橋仙吉は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、

(1) 前同日、前記株式会社糟屋製作所内において、同会社より前記(一)の競売物件を金二二五、〇〇〇円で買受け、同日右同所付近において、照査債権者飯島茂に対し右物件を金二五五、〇〇〇円で売り渡し、

(2) 昭和三六年一〇月一九日前記株式会社糟屋製作所内において、同会社より競売物件たる英式八尺旋盤一台ほか七点を金二七二、〇〇〇円で買受け、同日右同所において、前記飯島茂に対し右物件を金三四〇、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第一七、東乳食品工業株式会社競売関係

被告人藤原清および同北村茂三郎は、被告人森山五郎が昭和三六年一〇月三一日午後三時二〇分頃東京都渋谷区千駄ヶ谷町四丁目四番地東乳食品工業株式会社内で行つた債務者右東乳食品工業株式会社(代表取締役水口二郎)所有の高速多気筒冷凍機一台ほか三点(差押見積価額合計金七四〇、〇〇〇円、競落価格合計金一三五、〇〇〇円)の競売終了後、右競売現場付近の廊下において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人藤原清が、右競売現場付近の階段において、被告人森山五郎に対し、前記競売物件の競落に関し便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金五、〇〇〇円を被告人森山五郎の前記職務に関し供与し、

第一八、池田衣料株式会社競売関係

被告人石田一朗は、被告人森山五郎が昭和三七年一月三〇日午後零時一五分頃東京都中央区小伝馬町一丁目二番地の六池田衣料株式会社内で行つた債務者右池田衣料株式会社(代表取締役池田節子)所有の一抽斗高机一個ほか六八点(差押見積価額合計金五四、七〇〇円、競落価格合計金一〇、一〇〇円)の競売終了後、程なく、義弟に当る債権者代理人荒牧正則を介し、右同所付近の電車通りにおいて、タクシーに乗車した被告人森山五郎に対し、前記競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人森山五郎の前記職務に関し供与し、

右第一六ないし第一八の競売関係

被告人森山五郎は、右第一六の(一)、第一七および第一八記載のように、三回に亘り、右記載の日時、場所において、被告人藤原清ほか一名から、いずれもその都度、前記趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計一一、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第一九、株式会社長寿園競売関係

被告人岩崎聡吾は、被告人小野領四郎が昭和三六年七月一九日午後零時二〇分頃東京都渋谷区恵比寿町東一丁目二番地株式会社長寿園内で行つた債務者右株式会社長寿園(代表取締役鈴木秀夫)所有の金銭登録機一台ほか五九点(差押見積価額合計金二五、八〇〇円、競落価格合計金二四、〇〇〇円)の競売終了後、右同所において、競落代金を支払う際に、被告人小野領四郎に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人小野領四郎の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ。)に関し供与し、

第二〇、猪股利雄競売関係

被告人榎本信一郎は、被告人小野領四郎が昭和三六年七月一九日午後一時三〇分頃東京都渋谷区若木町三〇番地猪股利雄方で行つた債務者八田信也所有(占有者は右猪股利雄)の八〇貫プレス機一台ほか一四点(差押見積価額合計金二七、七〇〇円、競落価格合計金二六、五〇〇円)の競売終了後、右同所において、競落代金を支払う際に、被告人小野領四郎に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人小野領四郎の前記職務に関し供与し、

第二一、斉藤幸男競売関係

被告人小野領四郎は、昭和三六年一〇月一八日午後一時二五分頃東京都渋谷区常盤松町九一番地斉藤幸男方で行つた債務者右斉藤幸男所有のテレビ一台(差押見積価額金一〇、〇〇〇円、競落価格金二〇、〇〇〇円)の競売終了後、程なく、右斉藤幸男方玄関外において、競落人たる相被告人勝田幸男から、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一、〇〇〇円を前記職務に関し供与を受け、

第二二、永田幹夫競売関係

被告人白沢仲吾は、被告人小野領四郎が昭和三六年一一月一五日午前一一時四五分頃東京都港区芝赤羽町四番地明石ビルアパート永田幹夫方で行つた債務者右永田幹夫所有の洋服タンス一棹ほか二四点(差押見積価額合計金三三、四〇〇円、競落価格合計金三四、五〇〇円)の競売終了後、右同所において、競落代金を支払う際に、被告人小野領四郎に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇を被告人小野領四郎の前記職務に関し供与し、

第二三、株式会社弘明社印刷所競売関係

(一) 被告人高橋仙吉および同岩崎聡吾は、被告人小野領四郎が昭和三六年一二月七日午前一〇時五〇分頃東京都港区芝新橋町五丁目一番地株式会社弘明社印刷所二階作業室で行つた債務者右株式会社弘明社印刷所(代表取締役望月明)所有のテープ印刷機一台ほか六点(差押見積価額合計金三一三、〇〇〇円、競落価格合計金六八、〇〇〇円)の競売終了後、右同所において担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人岩崎聡吾が、右同所付近の階段踊り場において、被告人小野領四郎に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人小野領四郎の前記職務に関し供与し、

(二) 被告人高橋仙吉は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記株式会社弘明社印刷所において、同弘明社印刷所より前記(一)の競売物件を金六八、〇〇〇円で買受け、同日同所において債権者代理人弁護士林勝彦に対し右物件を金一四八、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第二四、望月みゑ子競売関係

被告人小野領四郎は、昭和三六年一二月二一日午後零時五分頃東京都港区芝白金三光町二七三番地恩田武夫方で行つた債務者望月みゑ子所有の木製冷蔵庫一台ほか一四点(差押見積価額合計金一六、五〇〇円、競落価格合計金一五、五〇〇円)の競売終了後、程なく、右恩田武夫方付近の路上において、競落人たる相被告人勝田幸男から、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、現金一、〇〇〇円を前記職務に関し供与を受け、

第二五、斉藤勇競売関係

被告人国松伊之助は、被告人小野領四郎が昭和三七年一月一九日午前一一時一〇分頃東京都渋谷区下通り三丁目一九番地斉藤勇方で行つた債務者右斉藤勇所有の洋服タンス一棹ほか二四点(差押見積価額合計金一七、八〇〇円、競落価格合計金一七、八〇〇円)の競売終了後、右同所において競落代金を支払う際に、被告人小野領四郎に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人小野領四郎の前記職務に関し供与し、

右第一九、第二〇、第二二、第二三および第二五の競売関係

被告人小野領四郎は、右第一九、第二〇、第二二、第二三の(一)および第二五記載のように、五回に亘り、右記載の日時、場所において、被告人岩崎聡吾ほか三名から、いずれもその都度前記趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計一〇、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第二六、金沢輝明競売関係

(一) 被告人榎本信一郎および同白沢仲吾は、被告人長田憲麿が昭和三六年八月一二日午後一時一〇分頃東京都中野区大和町一四四番地第一よねなみ荘内金沢輝明方で行つた債務者右金沢輝明所有の整理タンス一棹ほか四点(差押見積価額合計金三四、八〇〇円、競落価格合計一九、三〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人白沢仲吾のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら両名で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎および同白沢仲吾は、同日右競売終了後前記金沢輝明方において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人榎本信一郎が、右金沢輝明方玄関付近において、被告人長田憲麿に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務(序論で判示したとおり、以下同じ。)に関し供与し、

第二七、寺島広吉競売関係(その一)

被告人藤原清および同勝田善三郎は、被告人長田憲麿が昭和三六年九月九日午後零時五分頃東京都杉並区天沼町三丁目七一八番地寺島広吉方で行つた債務者右寺島広吉所有の七抽斗整理タンス一棹ほか八点(差押見積価額合計金三五、〇〇〇円、競落価格合計金六、四〇〇円)の競売終了後、右競売現場付近において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人藤原清が、前記寺島広吉方付近の路上において、被告人長田憲麿に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

第二八、寺島広吉競売関係(その二)

被告人藤原清は、被告人長田憲麿が昭和三五年九月一八日午後四時一分頃前記寺島広吉方で行つた債務者右寺島広吉所有の片袖机一個ほか一六点(差押見積価額合計金一二、六〇〇円、競落価格合計金五、四〇〇円)の競売終了後、右寺島広吉方応接間付近において、被告人長田憲麿に対し、右競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金一、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

第二九、寿電機株式会社競売関係

(一) 被告人藤原清、同高橋仙吉、同石田一朗、同国松伊之助および同神谷末夫は、被告人長田憲麿が昭和三六年一二月一二日午後四時二分頃東京都杉並区下高井戸町一丁目二二番地寿電機株式会社内で行つた債務者右寿電機株式会社(代表取締役玉井武男)所有の電気冷蔵庫一台ほか一八二点(差押見積価額合計金一四七、〇〇〇円、競落価格合計金四六、三五〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人高橋仙吉のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人高橋仙吉および同北村茂三郎は、同日右競売終了後前記寿電機株式会社入口付近の路上において、被告人高橋仙吉の発意により担当執行吏に金員を供与する旨打ち合せ、共謀のうえ、程なく、被告人北村茂三郎が右同所付近の路上において、被告人長田憲麿に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けた謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金三、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

第三〇、新学競売関係

(一) 被告人白沢仲吾および同北村茂三郎は、相被告人勝田幸男と共に、被告人長田憲麿が昭和三七年一月一二日午後一時五〇分頃東京都中野区鷺宮六丁目八四六番地新学方で行つた債務者右新学所有のテレビ一台ほか八点(差押見積価額合計金五〇、二〇〇円、競落価格合計金二二、四〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人白沢仲吾のみが競買申出人になり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人白沢仲吾および同北村茂三郎は、同日右競売終了後前記新学方競売現場において、相被告人勝田幸男を交え、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、相被告人勝田幸男が右新学方付近の路上において、被告人長田憲麿に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

第三一、斉藤一郎競売関係

(一) 被告人榎本信一郎および同北村茂三郎は、被告人長田憲麿が昭和三七年一月一三日午後二時五五分頃東京都中野区沼袋町四六一番地富士見荘内斉藤一郎方で行つた債務者右斉藤一郎所有のテレビ一台ほか四点(差押見積価額合計金二九、〇〇〇円、競落価格合計金一七、九〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人榎本信一郎のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人榎本信一郎および同北村茂三郎は、同日右競売終了後前記斉藤一郎方競売現場において、担当執行吏に金員を供与する旨相談し、共謀のうえ、程なく、被告人北村茂三郎が右斉藤一郎方アパートの階段付近において、被告人長田憲麿に対し、前記(一)の競売物件の競落に関し、便宜な取扱いを受けたことの謝礼並びに今後も便宜な取扱いを受けたい趣旨のもとに、現金二、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

第三二、川人献三競売関係

被告人志摩満は、被告人長田憲麿が昭和三六年三月一一日午後四時一二分頃東京都中野区鷺宮三丁目五一番地川人献三方で行つた債務者右川人献三所有の応接用椅子二脚ほか一一点(差押見積価額合計金六五、五〇〇円、競落価格合計金五五、五〇〇円)の競売終了後、右川人献三方玄関付近において、被告人長田憲麿に対し、右競売物件の競落に関し、道具屋が参集しないよう特別の配慮をするなど便宜な取扱いをしてくれた謝礼の趣旨のもとに、現金五、〇〇〇円を被告人長田憲麿の前記職務に関し供与し、

右第二六ないし第三二の競売関係

被告人長田憲麿は、右第二六の(二)、第二七、第二八、第二九の(二)、第三〇の(二)、第三一の(二)および第三二記載のように、七回に亘り、右記載の日時、場所において、被告人榎本信一郎ほか四名から、いずれもその都度、前記趣旨のもとに供与されるものであることを知りながら、右記載の現金合計一五、〇〇〇円をそれぞれ前記職務に関し供与を受け、

第三三、小枝春雄競売関係

(一) 被告人藤原清、同白沢仲吾および同勝田善三郎は、被告人佐藤隆二が昭和三七年一月一三日午後三時三〇分頃東京都練馬区貫井町四五二番地小枝春雄方で行つた債務者右小枝春雄所有の柱時計一個ほか九点(差押見積価額合計金一九、九〇〇円、競落価格合計金一〇、四〇〇円)の競売に際し、同日同所等において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を認識しながら、できるだけ多くの配当金を取得する意図のもとに、被告人藤原清のみが競買申出人となり、いわゆる「せり」をしないで、できる限り安い価格で競売物件を競落し、その物件の転売利益を被告人ら参加者全員で分配する旨を暗黙のうちに協定し、もつて不正の利益を得る目的で談合し、

(二) 被告人藤原清は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、前同日前記小枝春雄方において、同人より前記(一)の競売物件を金一〇、四〇〇円で買受け、もつて古物商の営業をなし、

第三四、有限会社光洋電球製作所競売関係

被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、昭和三六年八月二日東京都目黒区中目黒一丁目七四二番地有限会社光洋電球製作所(代表者森田米吉)において、同会社より競売物件たるテレビ一台ほか一点を金四三、〇〇〇円で買受け、もつて古物商の営業をなし、

第三五、今野鉄夫競売関係

被告人榎本信一郎は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、昭和三六年八月二六日東京都墨田区東両国町一丁目三番地今野鉄夫方において、同人より競売物件たるテレビ一台ほか一点を金二〇、〇〇〇円で買受け、同日同所において、右同人に対し右物件を金四〇、〇〇〇円で売り渡し、もつて古物商の営業をなし、

第三六、福島節子ほか四名競売関係

被告人高橋仙吉は、東京都公安委員会から古物商の許可を受けないで、

(一) 昭和三六年四月六日東京都台東区池ノ端仲町二二番地福島節子方において、同人より競売物件たる陳列ケース一個ほか二三点を金一七、六〇〇円で買受け、同日同所において、萩野要に対し右物件を金六〇、〇〇〇円で売り渡し、

(二) 昭和三六年四月七日東京都世田谷区北沢町三丁目一、〇三二番地萩野要方において、同人より競売物件たる角型座卓一個ほか二三点を金二五、〇〇〇円で買受け、同日同所において、右萩野要に対し右物件を金六〇、〇〇〇円で売り渡し、

(三) 昭和三六年四月一三日東京都世田谷区太子堂町二二〇番地川村正雄方において、同人より競売物件たる電気冷蔵庫一台ほか二六点を金二六、〇〇〇円で買受け、同日同所において萩野要に対し右物件を金を八〇、〇〇〇円で売り渡す取極めをし、

(四) 昭和三六年六月二四日東京都世田谷区北沢町四丁目四七二番地清家電機株式会社(代表取締役清家覚)において、同会社より競売物件たる応接用角卓一個ほか五四点を金一〇八、二〇〇で買受け、同日同所において、右清家覚に対し右物件を金二〇〇、〇〇〇円で売り渡し、

(五) 昭和三七年一月二七日東京都大田区東六郷町一丁目二一番地有限会社中村プレス工業所において、債務者小川巌より競売物件たる二号プレス一台ほか一五点を金五五九、〇〇〇円で買受け、同日同所において、池田正勝に対し金一、〇〇〇、〇〇〇円で売り渡し、

もつて古物商の営業をなし

たものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人らの判示所為中、各談合の点は刑法第九六条ノ三第二項、第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号に、各贈賄の点は刑法第一九八条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、第三条第一項第一号(共謀の点につき、なお刑法第六〇条)に、各収賄の点は刑法第一九七条第一項前段に、古物営業法違反の点は業態犯とし包括して古物営業法第六条、第二七条にそれぞれ該当する。

そこで、刑の量定について検討するに、本件は、東京地方裁判所所属の執行吏が行う有体動産の競売をめぐつて生じた談合、贈賄、収賄および古物営業法違反という一連の事件であつて、全体がなかば慣例的に行われた傾向が見うけられる点に特色がある。強制執行は、債権者を現実に満足させる手続で、司法作用の一翼をになうものとして重要な意義をもつものであるが、任意競売についてもこの理は変らず、法律が執行吏という国家機関を有体動産競売手続の主宰者として規定している意味もそこにある。本件には動産競売業者と執行吏とが関係しているところ、動産競売業者たる被告人らは、私的利益を追求するのに急なあまり、互いに結束して公けの競売制度の機能を没却し、担当執行吏に金員を供与するなど競売そのものに対し不明朗な雰囲気をつくり出し、果ては競落価格の二倍位の価格で競売物件を買戻させ又は転売するなど競売当事者の犠牲において不当な利益を取得していたものであり、執行吏たる被告人らは、動産競売業者らの行き過ぎを是正すべき指導的立場にありながら、さして疑うこともなく、軽卒にも動産競売業者らから金員の供与を受け、公務員としての体面を汚したばかりでなく、職務の遂行についての権威を失墜せしめたものであつて、被告人らの本件所為は、有体動産競売制度そのものに対する不信の念を抱かせる原因をつくり、厳正、公平であるべき司法制度に大きな汚点を与えたものとして、軽視することができない。

しかしながら、被告人らがこのような事態に立ち至つた背景には、序論で判示したような有体動産競売の持つ種種の特殊事情が大きく作用しており、談合の点も古くからこのような形態のものが続いてきたとみられる節があつて、被告人らの意識においては、むしろ執行吏の事務処理に協力している位の考えであつたともうかがわれ、また動産競売業者が現実に競売事件に関与するまでには、競売が延期されたりなどして無駄な労力を費すことも多く、配当金として受ける利益も債権者代理人に多額の分前をとられ、有体動産競売一件につき平均して手取り金二、〇〇〇円前後のものが多く、法律の予定する競売制度の理想と現実のくいちがいが如実に現われており、贈賄および収賄の点については、他の涜職事犯に比し、授受された金額が比較的軽微で、しかも執行吏の仕事の負担量とこれに対する待遇面との不均衡がこの種金員の授受を容易ならしめる一因になつているものとも認められ、当事者から受ける手数料のみが収入となる執行吏の特異な公務員性からくる感覚が多かれ少なかれ被告人らに影響しているものと考えられる。執行吏たる被告人らは、長年裁判所又は執行吏役場に奉職し、司法のために尽してきたものであり、また、動産競売業者たる被告人らについても、有体動産競売の特殊性から、この種専門業者の健全な育成指導を怠らないことにより、その存在意義を伸長することは充分期待できるところであつて、被告人らに対しては斟酌すべき点も少なくない。

以上の諸事情に、第二部本論で認定判示した被告人らの犯行の回数、態様および果した役割などを総合して考量したうえ、被告人藤原清、同榎本信一郎、同白沢仲吾、同高橋仙吉、同勝田善三郎、同北村茂三郎、同石田一朗および同国松伊之助に対しては、所定刑中いづれも懲役刑を選択し、被告人岩崎聡吾、同志摩満および同神谷末夫に対しては、所定刑中いづれも罰金刑を選択し、被告人鳥飼英穂、同佐藤隆二、同早乙女柴三郎、同森山五郎、同小野領四郎、同長田憲麿、同藤原清、同榎本信一郎、同白沢仲吾、高橋仙吉、同勝田善三郎、同北村茂三郎、同石田一朗および同国松伊之助の以上の各罪は、それぞれ刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により被告人鳥飼英穂に対しては犯情の最も重い判示第二の(二)に対応する収賄罪の刑に、同佐藤隆二に対しては犯情の最も重い判示第一〇の(二)に対応する収賄罪の刑に、同早乙女柴三郎に対しては犯情の最も重い判示第一三に対応する収賄罪の刑に、被告人森山五郎に対しては犯情の最も重い判示第一六の(一)に対応する収賄罪の刑に、同小野領四郎に対しては犯情の最も重い判示第二三の(一)に対応する収賄罪の刑に、同長田憲麿に対しては犯情の最も重い判示第三二に対応する収賄罪の刑に、同藤原清に対しては犯情の最も重い判示第一六の(一)の贈賄罪の刑に、同榎本信一郎に対しては犯情の最も重い判示第八の(二)の贈賄罪の刑に、同白沢仲吾に対しては犯情の最も重い判示第一三の贈賄罪の刑に、同高橋仙吉および同勝田善三郎に対してはいずれも犯情の最も重い判示第一〇の(二)の贈賄罪の刑に、同北村茂三郎に対しては犯情の最も重い判示第一三の贈賄罪の刑に、同石田一朗に対しては重い判示第一八の贈賄罪の刑におよび同国松伊之助に対しては重い判示第二五の贈賄罪の刑に、それぞれ法定の加重をした刑期範囲内において、被告人鳥飼英穂を懲役六月に、同佐藤隆二を懲役六月に、同早乙女柴三郎を懲役七月に、同森山五郎を懲役五月に、同小野領四郎を懲役七月に、同長田憲麿を懲役八月に、同藤原清を懲役六月に、同榎本信一郎を懲役六月に、同白沢仲吾を懲役五月に、同高橋仙吉を懲役七月に、同勝田善三郎を懲役六月に、同北村茂三郎を懲役五月に、同石田一朗を懲役四月におよび同国松伊之助を懲役五月に処し、被告人岩崎聡吾および同神谷末夫の前記各罪は同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項により各罪につき定めたる罰金の合算額の範囲内で、また被告人志摩満については所定罰金額の範囲内で、被告人岩崎聡吾を罰金三万五千円に、同志摩満を罰金二万円に、および同神谷末夫を罰金四万円に処し、同法第二五条第一項により、この裁判確定の日から、被告人鳥飼英穂、同佐藤隆二、同森山五郎、同白沢仲吾、同北村茂三郎、同石田一朗および同国松伊之助に対しては一年間、被告人早乙女柴三郎、同小野領四郎、同長田憲麿、同藤原清、同榎本信一郎、同高橋仙吉および同勝田善三郎に対しては二年間、いづれも右刑の執行を猶予し、被告人岩崎聡吾、同志摩満および同神谷末夫が右罰金を完納できないときは、同法第一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間その被告人らを労役場に留置し、被告人鳥飼英穂らが供与を受けた金員は既に費消され又は混同により没収することができなくなつたことが明らかであるから、同法第一九七条ノ五後段により、被告人鳥飼英穂から金九、〇〇〇円、同佐藤隆二から金一〇、〇〇〇円、同早乙女柴三郎から金一五、〇〇〇円、同森山五郎から金一一、〇〇〇円、同小野領四郎から金一二、〇〇〇円および同長田憲麿から金一五、〇〇〇円を各追徴し、訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により別表記載のとおり、関係被告人欄記載の被告人らをしてこれを負担せしめるほか、国選弁護人に支給した分は、被告人志摩満の負担とすべきものとする。

(弁護人等の主張に対する判断)

弁護人等は、

(一)  執行吏代理は、執行吏役場に雇傭されている一従業員に過ぎず、唯だ執行吏から委任された特定執行の事実行為を代行するものであつて、その公務に従事する形態も従属的、個別的であるため、鑑定人らと同様公務従事の継続性を欠くから、刑法第七条第一項にいわゆる「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」には該当しない。

(二)  動産競売業者と執行吏との間に金員の授受があつたとしても、執行吏は、有体動産競売の執行に際し、動産競売業者に何等便宜な取扱いのできる余地がなく、また授受された金員は、職務執行とは何ら対価関係のない車代という社交儀礼的なものであつて、違法性を欠き、被告人らには賄賂の認識がなかつたのであるから、本件については贈賄罪および収賄罪は成立しない。

(三)  動産競売業者らは、有機的に結合している一種の法人的利益団体であつて、各自が独立した競争者として競売に参加するものではなく、競売に際しもとより如何なる話し合いもしておらず、また、執行吏の付する差押見積価額は、主観的価値判断を示すに過ぎないものであつて「公正ナル価格」とはいえず、競売実施に利害関係を有する当事者、特に債権者が納得した競落価格こそ「公正ナル価格」であるから、当事者に異議のない本件各競売の競落価格は適正であり、転売等による利益取得は正当なものであつて、本件については談合罪の成立要件を欠くものである。

旨主張するので、以下、これらに対する判断を示すことにする。

(一)  執行吏代理の公務員性について

序論第一の二で判示したように、執行吏代理は、執達吏規則第一一条により執行吏の職務を行うものであり、国家機関としての執行吏が法令で定められた一定の有資格者の中から選任し、所属地方裁判所に選任届がなされるなど、その選任は一般の従業員の雇傭関係とは全くことなり、またその職務の執行に関しては、執行吏と同一の国家権力を付与され、競売物件の買受を禁止される(執行吏事務処理規則第二二条)など執行吏と同じく職務執行の公正が義務づけられており、現実的にも、委任を受けた事件につき、債権者らとの打合せから関係調書の作成に至るまで、執行吏と全く同一内容の仕事を独立して処理している。執達吏規則上は、執行吏代理に対する事件の委任が臨時的、個別的であつて、包括的、一般的でないこと(同規則第一一条、第一七条)は所論のとおりであるが、右規定は、執行吏の執行吏代理に対する委任が、私的、個人的関係においてなされることを肯定するものではなく、執行吏事務処理規則によれば、執行吏代理の選任届が委任する個個の執行事件毎になされることまでは求めておらず、執行吏代理の証票の交付(同規則第一一条第二項)、執行吏が執行吏代理を解任したときは遅滞なくその旨所属地方裁判所に届け出て執行吏代理の証票を返還すること(同規則第一五条)などの規定とあわせ考えれば、執行吏代理として選任された者は、委任を受けた個個の執行行為が終了しても、執行吏から改めて解任の告知を受けない以上、刑法第七条第一項の「法令ニ依リ公務ニ従事スルソノ他ノ職員」たる地位を維持しているものと解することができる。古く大審院が執達吏代理につきその公務員性を肯定したように(大審院明治四二年八月三一日休暇部判決・録一五輯一一二一頁・同明治四四年一二月八日第一刑事部判決・録一七輯二一六四頁、同大正一二年六月一一日第二刑事部判決・集一巻五一九頁参照。)、執行吏代理もまた刑法第七条にいう公務員たるに何ら妨げないものというべきである。(なお、当該職務行為の公正に対する信頼は、当該職務の執行中のみでなくその前後の段階においても遵守すべきものであるから、いやしくも公務員たる身分を有する者が、職務行為の終了直後、右職務の執行に関し金員を受領した以上は、刑法第一九七条第一項の収賄罪を構成するものといわなければならない。)

(二)  動産競売業者と執行吏間に授受された金員の性質

執行吏は、手持事件が多く、当初予定した執行時間に見込み違いをきたすなどして、時間的制約から、事実上、いづれかの執行事件を延期せざるを得ない事態を生ずることがあり、また債務者宅が留守で家人の帰宅を待つ時間的余裕のない場合には延期することが考えられたりするところ、かかる場合には、有体動産競売が実施されることに重大な利害関係を持つ動産競売業者が執行吏に何等かの働きかけをしている事例もうかがわれる(第二部本論参照)。また、序論第三で判示したとおり、競売物件の付値をめぐる執行吏と動産競売業者間の事実上の折衝や競落価格が著しく低廉な場合には職権で競売を延期する執行吏もいることなどを考えると、動産競売業者が競売物件を競落すること自体又はその競落価格につき、担当執行吏の態度ないし流儀にかなり影響される余地が存することは否定できないところである。尤も、執行吏の職務権限と対比して、これらのことがらにつき示す執行吏の態度如何が違法性を帯びるまでに至るかどうかは別として、裁量的事項とはいいながら、執行吏が動産競売業者に対しある程度の配慮をする余地があることは明らかである。また、供与される金員の額について検討すると、これは第二部本論で判示したとおり、競落価格あるいは競売物件の処分による取得利益の見込額とある程度の相関関係を示しているし、最低額の金一、〇〇〇円でもタクシー代の実費をはるかに上回つていることが明らかなばかりでなく、自動車の便を与えられ何等車代の支払いを必要としない多くの事件についてもなおかつ金一、〇〇〇円から五、〇〇〇円までの金員が授受されており、かつ、競売手続が競落にまで至つた場合にのみその手続の直後に供与されているのであつて、到底、社交儀礼上許された金員の供与とはいえず、これら金員は、既に第二部本論で認定判示したように、競売が終了し動産競売業者に一定の利益が見込まれる場合に、謝礼的意味と今後に対する配慮から供与される性質の金員であるとみるのが相当であり、また、金員授受の時期、場所および方法などから、被告人らが、右金員の授受を公けには許されないものと認識していたことは前顕各証拠によつて明らかである。

(三)  本件につき談合罪の成立を認めた理由

序論第二および第三で判示したように、霞ヶ関交友会に所属している動産競売業者が、競売現場において競争関係に立つことなく、競売物件の点検、売得金の支払い、競買物件の搬出などに協同的に活動していることは疑いがないとしても、右交友会は、団体としての性格が法律的にはもとより事実上も、極めて稀薄なものであつて、各人が動産競売業者として独立した地位および力を持ちながら、すべてが一定の配当金の分配にあずかれることを代償に、競買意思を予め又は少くとも競売現場において放棄しているに過ぎず、各人は、交友会又は特定の動産競売業者の従業員的立場ではなく、一個の独立した競買人としての資格で競売現場に臨んでいるものと認めることができる。執行吏が競売物件に付する差押見積価格については、序論第三の一の(一)で述べたような問題があり、談合罪の構成要件概念の一である「公正ナル価格」とは、競売なる観念を離れて客観的に測定さるべき公正価格をいうのではなくて、あくまで、当該競売において、公正な自由競争が行われたならば形成されたであろう競落価格を指すものと解されている(大審院昭和一九年四月二八日第三刑事部判決・集二三巻九七頁、最高裁判所昭和二八年一二月一〇日第一小法廷決定、集七巻一二号二四一八頁、同昭和三二年七月一九日第二小法廷判決・集一一巻七号一九六六頁参照。)ことからも、右差押見積価額が直ちに「公正ナル価格」そのものとなるものでないことは所論のとおりである。しかしながら、第二部本論で談合罪として判示した各事実の関係諸証拠によれば、他の者への利益の分配などにわずらわされないいわゆる街の古物商が、競売物件を債務者宅にある状態で買取る場合の価格は、いづれも動産競売業者の競落価格より相当高く評価されていることが認められ、序論第三の二の(三)に述べたとおり、動産競売業者自身が、競落価格に多額の「権分」を含めたうえ相当の利益を見込んで競売物件の権利を取得したり、動産競売業者相互間でいわゆる「二番ぜり」をしたりして、競落価格をかなり上回る価格で引取つても採算がとれることを示しているのであつて、少くとも本件で談合罪を認定した事案に関する限り、所論競落価格が公けの競売制度下における適正価格であるということは到底できない。尤も、本件競落価格については、法律的に当事者から何ら異議の申立がなされていないものと認められることは所論のとおりであるけれども、前示諸証拠によれば、債権者本人らも自ら立会つた事案のうちには、当事者が明らかに競落価格について不信を感じ納得できない気持を抱いたものもみうけられるのであつて、債権者が競落価格に異議をとなえぬことには種種の理由があり、買戻す資力のない債務者にとつても、競落価格の如何が債務の弁済充当額に影響を及ぼすものであつて、公けの競売制度が設けられている趣旨に照し、債権者側が競落価格に異議を唱えなかつたことから、直ちに当該競落価格即「公正ナル価格」であると断定することはできない。

本件でも、競売開始前に債務者らとの間に買戻等の交渉ができている事例もないではないが、通常の競売事件においては、動産競売業者らの間で、競落価格や配当金につき、事前に明確な話し合いまでが行われていたと認むべき証拠のないことは所論のとおりであるけれども、動産競売業者は、長年の慣例で明示的な協定はしなくとも、配当金の分配を目的として、当該競売物件につき「せり」をして競買しても採算のとれる価格を一応認識しながら(具体的な価格でなくとも、ある範囲の巾のある価格で足りる。)競買意思を放棄して、できる限り安い価格で競売物件を競落しようとの態度を暗黙のうちに示し合い、互いにそれを諒承し、付値をする者も、品物を点検する者も、現場にただ参集するだけの者も、同じ目的のもとに結びついていることが前顕諸証拠によつて明らかである。動産競売業者個人が取得する配当金の額は、それほど多額ではないにしても、差押見積価額、競落価格と利益分配の対象となる金額を相対比するならば、相当に高い割合を示しており、一般に競落価格の低廉なことがこの利益額に影響を与えていることは明らかであるから、当該競売物件の公正なる価格を認識しながら、右のような所為に及んだ以上は、不正な利益を得る目的をもつて談合したものと断ぜざるを得ない。もとより、「せり」をしたか否かという外形的なことのみで談合罪の成否が決るものではなく、参集した動産競売業者全員に一定の配当金を分配するため、当該競売物件の取引通念上想定し得る価格を認識しながら、その価格をはるかに下回る競落価格を付していることが談合罪を認定すべき徴憑となるものと解されるのである。

以上の理由により、弁護人等の主張は、いづれも採用することができない。

(無罪の理由)

逆井衛競売関係(第五事実)

被告人榎本信一郎、同勝田善三郎および同鳥飼英穂に対する昭和三七年四月一三日付起訴状第一の四および第二の一の(四)記載の公訴事実の要旨は、

「被告人榎本信一郎、同勝田善三郎は、共謀のうえ、昭和三七年九月二六日、被告人鳥飼英穂が東京都葛飾区本田渋江町四七〇番地逆井衛方で実施したタンス一本ほか五点の競売に際し、同被告人に対し、右物件の競落につき便宜な取扱いを受けた謝礼並びに今後も同様の取扱いを受けたい謝礼の趣旨で、右逆井衛方付近路上において現金一、〇〇〇円を供与し、

被告人鳥飼英穂は、被告人榎本信一郎らより、右同趣旨のもとに供与されることを知りながら、右日時、場所において、現金一、〇〇〇円を収受した。」

というのである。

よつて審究するに、被告人らはいずれも当公判において右金員授受の事実を否認しているところ、この事実の存在を肯定できるが如き一応の証拠としては、被告人榎本信一郎の検察官に対する三月二三日付および四月六日付各供述調書、被告人勝田善三郎の検察官に対する四月五日付供述調書並びに被告人鳥飼英穂の検察官に対する三月三一日付供述調書中の金員の授受がなされた旨の供述記載がある。

しかしながら、右記載内容を検討すると、被告人勝田善三郎の供述記載は、被告人榎本信一郎の供述記載とほぼ同一内容を示しているところ、最初に自白したものとみられる被告人榎本信一郎の右各供述記載は、「本件競売には藤原清も参加している。小森の自動車で先生(執行吏のこと)を送つた記憶がある。」というにあり、審理の結果明らかにされた客観的事実と全く相違しているほか供与したという金額についても動揺を示し、本件に関する右被告人両名の各供述記載の信憑性には多くの疑問が存する。また、被告人鳥飼英穂の前記供述内容は、「債権者と一諸に家を出て丁字路で別れ、立石の消防署付近の執行に行つたので、自分としては道具屋が金をよこすチヤンスはなかつたと思うが、あるいは榎本から一、〇〇〇円をもらつているかも知れない。もしそうだとすれば云々。」というにあり、寧しろ否認ともうかがえる種類のものである。この点につき、被告人鳥飼英穂は、当公判において、より高額の金員授受を含む他の起訴事実については殆ど金員の授受を認めながら、本公訴事実については一貫して否認の態度をとり、特に、第七六回公判において、「次の執行場所に行くため本田小学校前でバスに乗つたが、ポケツトにバス代の金もなく、鞄の中の売得金を一時用達したことがあつた。」旨陳述し、本事実のみをことさら否認しなければならない事情は少しも見出されず、同被告人の本事実に関する弁明には聴くべきものがあり、他に、本公訴事実を首肯すべき証拠はない。

以上の理由により、本公訴事実については合理的な疑いを超えるまでの証明がなされていないものとして、刑事訴訟法第三三六条により、被告人らに対し無罪の言渡をすべきものとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 竜岡資久 太田浩 松本光雄)

訴訟費用一覧表(略)

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